大きいのは正義

 

ヾ(‘ω’)ノ゛が「雑談部屋」を作成しました。(6/24 19:02)

(゜д゜ )が入室しました。(6/24 19:02)

ヾ(‘ω’)ノ゛「いやぁ、さっきの戦いは充実していたね」(6/24 19:03)

(゜д゜ )「うむ。いつもあれぐらいの展開が出来るメンツが揃えば、うちの国もかなり強くなるんだろうがな」(6/24 19:04)

ヾ(‘ω’)ノ゛「まぁな。しかし高望みばかりもしていられない。今度また連休に併せてイベントやるらしいから新規参加者多くなるだろうし、また荒れるだろうね」(6/24 19:05)

(゜д゜ )「運営会社もくだらないイベントばっかやってないで、ユーザーの求めに応じたチュートリアルを作れと何度ry」(6/24 19:06)

ヾ(‘ω’)ノ゛「まぁ、言っても始まらないさ。ところでかなり話は変わるが、君にひとつ質問があるんだ」(6/24 19:07)

(゜д゜ )「なんだ?」(6/24 19:07)

ヾ(‘ω’)ノ゛「例えば君は、AとBとCとDならば、どれを選ぶ?」(6/24 19:08)

(゜д゜ )「Dだな」(6/24 19:08)

ヾ(‘ω’)ノ゛「何故だね」(6/24 19:08)

(゜д゜ )「大きいのは正義だからだ。欲を言えば、EとFとGとHの選択肢も欲しかったくらいだ」(6/24 19:09)

ヾ(‘ω’)ノ゛「ふむ。だが実際問題として、年老いた後のEFGHは、それは無残なものらしいぞ」(6/24 19:10)

(゜д゜ )「想像に難くないな。だが、年老いた時の話などには興味ないね。俺は今を楽しむ主義だ」(6/24 19:11)

ヾ(‘ω’)ノ゛「ほう」(6/24 19:11)

(゜д゜ )「しかし、現実とは上手く出来ていないものでな。実は俺は結婚しているんだが」(6/24 19:13)

ヾ(‘ω’)ノ゛「おいマジかよお前うぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwリア充氏ねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:13)

(゜д゜ )「あ、言ってなかったかスマン。まぁ聞けよ」(6/24 19:14)

ヾ(‘ω’)ノ゛「あ、あぁ、すまない、取り乱したようだ・・・・」(6/24 19:15)

(゜д゜ )「うむ。でまぁ俺は結婚しているんだがな、今聞いて解ったとおり、俺は大きいのが正義だと思っている」(6/24 19:17)

ヾ(‘ω’)ノ゛「ふむ。その君が選ぶのだから、奥方はさぞ」(6/24 19:18)

(゜д゜ )「Aだ」(6/24 19:18)

ヾ(‘ω’)ノ゛「・・・何?」(6/24 19:19)

(゜д゜ )「Aなんだ。俺の嫁は。むしろA-と表記してもいいだろう」(6/24 19:20)

ヾ(‘ω’)ノ゛「何故だ?大きいのが正義の君が」(6/24 19:21)

(゜д゜ )「俺自身が意外だったがな。でも実際俺の周りも多いんだ」(6/24 19:22)

ヾ(‘ω’)ノ゛「ほほう、興味深いな」(6/24 19:22)

(゜д゜ )「大きいのが正義というやつほど、実は彼女とか嫁とかは皆一様にAかBだったりする」(6/24 19:23)

ヾ(‘ω’)ノ゛「不思議なものだ」(6/24 19:23)

(゜д゜ )「事実だ。学会に発表していいくらいの法則性を感じる」(6/24 19:24)

ヾ(‘ω’)ノ゛「では、不満に感じたりしないのか?」(6/24 19:24)

(゜д゜ )「全く感じないな。それもまた愛する嫁なればこそ」(6/24 19:25)

ヾ(‘ω’)ノ゛「イラッ☆」(6/24 19:25)

(゜д゜ )「まぁ聞けよ」(6/24 19:25)

ヾ(‘ω’)ノ゛「聞こう」(6/24 19:26)

(゜д゜ )「この分野に関して俺の尊敬する恩師が、こう言っていた」(6/24 19:26)
「『大きいのは、夢が詰まっている。だから大きい。小さいのは、夢を分け与えている。だから小さい』・・・と」(6/24 19:27)

ヾ(‘ω’)ノ゛「名言・・・」(6/24 19:27)

(゜д゜ )「俺は嫁から夢を貰っている。つまりはそういうことなんだ」(6/24 19:28)

ヾ(‘ω’)ノ゛「君、実はいい男だな」(6/24 19:28)

(゜д゜ )「まぁな。因みに夢の結晶が、来月誕生予定だ」(6/24 19:29)

ヾ(‘ω’)ノ゛「マジかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwおめwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:29)

(゜д゜ )「ありwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:29)

ヾ(‘ω’)ノ゛「いや、いい話を聞いたよ。胸もお腹も一杯だ」(6/24 19:30)

(゜д゜ )「出産祝いはアブちゃんでいいぞ」(6/24 19:30)

ヾ(‘ω’)ノ゛「包んでおこう。明日ア○チャンホンポを覗いてくるとしよう。近所にあるんだ」(6/24 19:31)

(゜д゜ )「あー、うちも近くにあるわ。でもあそこ高くね?」(6/24 19:31)

ヾ(‘ω’)ノ゛「品質はいいらしいがね。何、親友の夢の結晶の誕生に金をケチるほど私は落ちぶれちゃ居ないさ」(6/24 19:32)

(゜д゜ )「単なるネトゲ仲間だと思っていたが、親友だったのか。じゃあ後で住所送るわ。あれ、同じ県なんだっけお前」(6/24 19:32)

ヾ(‘ω’)ノ゛「あぁ。因みにそちらだけ言うのもあれだろうから言っておくと、私は○○市の○○○-○○だ」(6/24 19:33)

(゜д゜ )「おいwwwwwwwwwご近所wwwwwwwwwwwww」(6/24 19:33)

ヾ(‘ω’)ノ゛「まwwwwwwwwwwwwwwwwwじwwwwwwwwwwwwかwwwwwwwwww」(6/24 19:33)

(゜д゜ )「俺は○○○-○○wwww」(6/24 19:33)

ヾ(‘ω’)ノ゛「テラご近所wwwwwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:33

(゜д゜ )「解ったお前、あのブランコ一個壊れてる公園でいつも猫撫でてる奴だろwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:34

ヾ(‘ω’)ノ゛「ちょwwwwwww何故ばれたしwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:34

(゜д゜ )「やっぱりwwwwwwwww前にお前公園の話してただろwwwwww俺あれよ、その公園のすぐ脇っちょにある○○不動産の営業wwwwwwww」(6/24 19:35)

ヾ(‘ω’)ノ゛「俺そこで部屋借りたんすけどwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:35

(゜д゜ )「おwwwwwwwww客wwwwwwwwwwww様wwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:35

ヾ(‘ω’)ノ゛「いやー、びっくりしたわー」(6/24 19:36)

(゜д゜ )「びっくりだな」(6/24 19:36

ヾ(‘ω’)ノ゛「直接手渡しにいくよ。マジおめでとう」(6/24 19:37

(゜д゜ )「ありがとう」(6/24 19:37)

ヾ(‘ω’)ノ゛「サイズの話が、広がったなー」(6/24 19:38)

(゜д゜ )「だなぁ。類は友を呼ぶ。まさか、お前も大きいのは正義派だな」(6/24 19:38)

ヾ(‘ω’)ノ゛「何を今更。当然」(6/24 19:38)

(゜д゜ )「だよな。まぁこんなの口が裂けても嫁にはいえないけどな」(6/24 19:39)

ヾ(‘ω’)ノ゛「俺ばらしそうwwwwwwww」(6/24 19:39)

(゜д゜ )「止めてくださいお願いしますwwwwwwwww」(6/24 19:39)

ヾ(‘ω’)ノ゛「じゃあ、また今度な。道であったら声掛けてくれよ」(6/24 19:40)

(゜д゜ )「わかった。じゃあまたなー」(6/24 19:40)

ヾ(‘ω’)ノ゛「おう、またなー」(6/24 19:40)

(゜д゜ )が退室しました。(6/24 19:41)

 

(゜д゜ )が入室しました。(6/24 19:45)

ヾ(‘ω’)ノ゛「ん、どうしたん?」(6/24 19:46)

(゜д゜ )「へぇ、大きいのが正義、ね」(6/24 19:49)

ヾ(‘ω’)ノ゛「何を言っているんだ?」(6/24 19:50)

(゜д゜ )「あ、涎掛け頂けるんですか?すみません有難うございます。大きいのが好きな夫を、よろしくお願いします」(6/24 19:51)

ヾ(‘ω’)ノ゛「・・・・・・・・」(6/24 19:52)
「奥様ですかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」(6/24 19:52)

(゜д゜ )「はい。じゃあ、ちょっと夫と話があるので、私もこれで失礼します」(6/24 19:53)

ヾ(‘ω’)ノ゛「あ、はい。ごゆっくりどうぞ」(6/24 19:53)

(゜д゜ )が退室しました。(6/24 19:54)

ヾ(‘ω’)ノ゛「・・・・・・」(6/24 19:55)
「生㌔よ、(゜д゜ )・・・」(6/24 19:55)

ヾ(‘ω’)ノ゛が退室しました。(6/24 19:56)

 

2011/6/24

忍題β・お題 「おっぱい」 より

 

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風を呼ぶ家

 

 茹だるような暑さに、堪らず学校指定の夏服用ベストを脱いで鞄に仕舞い込む。
 七月にはいると期末テストさえ終われば、学校全体はもうすっかり夏休み気分だ。
 ろくにクーラーも効いていない校内からはとっとと退散することにして、相変わらず部活動で賑やかな校舎をあとにした。

 

 この高校は学長の方針で全校生徒が必ず何かしらの部活動に入っていなければならないのだが、運動があまり得意ではなくインドアの趣味もそこまでない私は、郷土文化研究部、という部活に所属している。
 活動内容といえば年に一度の文化祭の時に部室で郷土文化の資料展示をする位で、所謂、避難場所扱い。噂によれば三年連続で同じ資料を展示する猛者もいるとかいうのだから、驚きだ。
 そんな部活だが、年一回の発表の場だけはやらねばならない。つい先日になって顧問からこの課題を改めて伝えられたので、夏休みの宿題は七月中に全て終わらせるタイプの私は九月に控える文化祭展示のための資料を集めに、今日は街を探索することにしていた。
 夏休み中にそんな事をやるなんて、真っ平ゴメンだからだ。

 

 校門から伸びる桜並木を終えて十字路に立ち、少し考えてから左に曲がる。
 気持ちは直進で入れる遊歩道から二両編成のローカル線が走る無人駅に向かいたいのだが、それでは家に帰るだけだ。そして十字路を右へ行くとこの町唯一の商店街だが、そこには郷土文化といえるような代物が置いてあった記憶はない。寂れ具合が現在の郷土文化、と捉えるなら話は別であろうが。
 なのでここで何かを探そうと思ったら、選択肢は左しか無かった。

 

 灘らかに登っていく道を暫く歩いてみると、古めかしい木造の建築物が並ぶ中に、いくつかの町工場らしきものがあるのが見える。
 更にその先を眺めてみれば一向に畑と林と山肌しか見られなかったので、この辺りの建物を見学してみる事にした。

 地域性からか、この辺りの人々はとても人当たりが良く、職場見学には喜んで応じてくれる。
 だが見た限りでは肥料や農薬の工場と、林業を営む材木屋の倉庫、そして水道管の修理工房等等、郷土文化というには些か首を傾げたくなるものばかりが立ち並ぶ。
 勿論何れも暮らしには重要なものなのは分かるのだが、これを持ち帰ったら流石に顧問に怒られそうだ。

 

 そうして更に次の場所を求めて水道管修理工房の主人に礼を言ってから歩き出した矢先、遠くから響く微かな音が風に乗って耳に届いた気がした。
 音に誘われて歩いて行くと、辿り着いたのは小さな倉庫みたいな場所だった。
 開けっ放しの扉から中を覗き込むと、古めかしい窯が先ず目に入る。その他にも見慣れない道具が立ち並んでいるので何かの制作工房の様だが、その詳細はわからない。
 そこに再び、チリンと透明な音が鳴る。その音の出処を目線で辿ると、それは入り口の雨避けトタン屋根の端に吊るされた、瓢箪みたいな形をした風鈴だった。

「その風鈴、形が珍しいでしょう。名前はそのまんま、瓢箪型風鈴。ウチの作品だよ」

 しばし観察していたところに今日の日照りみたいにカラッと明るい声を掛けられて振り返ると、勝気そうな表情のお姉さんが立っていた。
 上はTシャツ、下は作業服。そして首からタオルを掛けている。先程までの工場のおじさん等とは違い、主婦や公務員以外でこの町ではなかなか見かけない若い年齢層の女性だった。

「あなた、峰高の生徒ね。余りの暑さに、ここの風鈴に涼を求めにきたのかしら」

 自身の高校の略称よりも、風鈴に涼を、の部分に反応して目を見張る。瞬間的には、理解できなかったのだ。

「・・・年代的にイマイチぴんと来ないか」

 私の反応を見てそう言うと、お姉さんは自分の背後に親指をむけて指し示した。

「暑いでしょ。ここで会ったのも何かの縁よね、上がっていきなよ。冷たいお茶位は出せるよ」

 言うが早いか、こちらの返答を聞かずにお姉さんは歩きだしてしまった。
 あまり慣れていない展開だけど、ここはせっかくなのでついて行くことにした。どううがった見方をしても、今のお姉さんが不審な人には見えないし。

 

 招かれた家は、これでもかというほど純和風。ガラガラの玄関を通って木の感触が足の裏から伝わる廊下を案内されて、縁側のある広い部屋に入った。
 部屋の側面いっぱいに広くとられた縁側の半分は簾で太陽の熱線を遮断し、しかし風を呼び込んでいる。そしてその脇には、ここにも風鈴。先程のものよりもやや小振りだが、風に揺られて鳴らす音は等しく透明だ。
 しばし部屋の中を観察していると、先程のお姉さんが氷とお茶に満たされたグラスを二つ持って入ってきた。

「はは、珍しい?」

 その言葉に、素直に頷く。自分の家とは構造が全く異なり、まるでドラマのセットを見ているような気分だった。
 屋根裏には、まっくろくろすけが住んでいそう。
 思った通りに伝えると、お姉さんは声をあげて笑った。

「流石に近所にトトロは住んじゃいないけど、まっくろくろすけはいるかもね」

 あんまり自然に笑いながらいうものだから、まるで初めて会った気がせずに、気がつけばすっかり寛ぎながら今日の目的を話していた。

「へぇ、郷土文化研究部、ねぇ。そうはいっても、ここは昔からの伝統産業って言えるほどのものはあんまり無いかもしれないね。だのによくそんな部を作ったもんだ」

 あっけらかんとそういうので、この風鈴は違うのかと少し残念に思い、そう言った。
 するとお姉さんは風鈴についてそう言われたことが嬉しかったのか、また明るく笑いながら口を開く。

「ここの風鈴は、私の爺ちゃんがこっちに来て作り始めたんだ。元は東京の技術だね」

 そうして、お姉さんは風鈴のちょっとした歴史を披露してくれた。
 元をたどれば風鈴とは風鐸(ふうたく)と呼ばれる魔除け道具であった事。ルーツが紀元前の中国である事。世界中に様々な形で広まっている事等等。

「よく市場にオモチャみたいな価格で流れているものは、その全てが型を使って作られたものだね。色形はまぁまぁだけど、あれじゃあ肝心のものが抜けてるんだ」

 妙に含む言い方で言葉を終えたので突っ込んで聞いてみると、お姉さんは縁側の風鈴に目線をむけた。
 つられてそちらに顔を向ければ、丁度のタイミングで風に吹かれた風鈴が、また透明な音を奏でる。
 あ、と声にだして反応すると、お姉さんはにこりと笑った。

「そ、音さ。音一つで涼しさを思わせる本物の響きは、流石に手作りにしか出せない。涼を奏でる。それこそが風鈴の真骨頂ってわけ」

 その言葉に感心した調子で声を上げると、お姉さんはちょっとだけさみし気に笑いながら、でもね、と言葉を続けた。

「風鈴の役割は、そろそろ終わりかけてる。今は此処みたいに風を呼び込む夏じゃなく、締め切ってエアコンだからね。ま、麓の簾屋さんも同じ事を言ってたけどね」

 確かにそうだなぁ、と思いながら自宅を省みる。居間と各自の部屋にはエアコンがあり、今の時期は窓を開けることが殆ど無い。

「ここは下に比べりゃ高地だからまだ縁側に簾と風鈴だけでも涼を得られるけれど、十年後は分からない。私が子供の頃に比べてでさえ、今は異常に暑いからね」

 毎年のように異常気象、前年を上回る猛暑と言われ続けて、もはや自分にとっては毎年美味しくなったと言われる不思議飲料ボージョレーと同じ感覚でいたものだけど、いずれは今が温いと思うほどに暑くなるのだろうか。

「郷土文化というよりは、今までの日本文化そのものが消えようとしているのかもしれないね。でも其れは、仕方のないことかもしれない。風鈴も簾も風を呼び込むこの家も、その時の需要に応じて生まれた文化。そしてエアコンもその他の色んな電化製品も今の住宅構造も、今の需要に応じて生まれた文化さ。流行り廃りは世の常よ。爺ちゃんがきいたら、ばかもーん、って怒るだろうけれど」

 部屋の奥にある仏壇に、それとなく目が向く。お爺さんは今を嘆いているのだろうか。
 でもこのお姉さんは、今に肯定的だ。柔軟な考えを持っているし、否定をしない。
 なのに、何故ここにいるのだろう。そんな疑問が浮かび、聞いてみた。

「あはは、答えは単純」

 そう言って背伸びをし、お姉さんは部屋の空気をいっぱいに吸い込んだ。

「ここが、好きだから」

 気がついたらお爺さんの手伝いで風鈴作りをしており、昔ながらの制作方法と、火の調整が大変らしいコークス窯と呼ばれる炉を用いたここの風鈴は、実は地域を超えて評判がいいらしい。
 ちょっと自慢なんだよ、なんていいながら話してくれた。

「文化を守る、なんて大義名分は別に無いけど、私は運がいいと思っている。なにせ此処に生まれて、ここを好きになれて、好きな事をして暮らしているんだからね」

 そう言ってお姉さんは自分のグラスに満たされた麦茶をぐっと呷る。
 私も倣って喉に流し込むと、冷たい麦茶がすごく美味しくて、簾から流れ込む風が気持ち良くて、風鈴の音がとても涼しい。

 夏なんて外に出ればひたすら暑いだけで好きじゃなかったけど、初めてここで日本の夏、みたいなものを肌身に感じて、なんとなく目の前のお姉さんがここを好きだと言っている感覚が分かる気がした。
 お姉さんも私の表情からそれを読み取ったのか、にこりと笑った。

「また、おいでよ。ここは夏は風の住処で、秋は紅葉が燃えて、冬は囲炉裏がまたおつなもんなんだ。そして春になれば、新緑に合わせてよく薫る。そんな、日本の家。郷土文化研究部の題材には、悪くないかもよ?」

 その言葉に私が大きく頷くと、またお姉さんは明るく笑ってくれた。

 

 お土産になんと風鈴をひとつ頂いてしまい、別れを惜しみつつも家路に着く。
 耐えきれなくて道すがらに風鈴の舌を戒めから解き放つと、チリンと鳴ったその音に、心にふわりと風が吹いた気がして涼しくなる。
 そんな感覚は知らないはずなのに何故か懐かしい気持ちになって、それがなんでか嬉しくて、自然と足が軽くなった。
 夕暮れでまだまだ蒸し暑い帰り道に、私は涼やかな表情で一人鼻歌交じりに駅へと向かっていく。

 九月の文化祭までに彼処に通いつめて、あの場所を皆が知ってくれる様にしようと密かに心に決めながら。

 今年の夏休みは、例年より少し涼しく過ごせそうだ。

 

2011/7/16

物書きの集い・お題企画 「風鈴」 より

 

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空の鏡

 

 思いっきり泣き腫らすような勢いで明け方から雨を降らせ続けていた空模様も午後には機嫌をなおし始めたようで、放課後にふと気がつけば、いつの間にやら微風に揺らめく小雨となっていた。
 昇降口を出る時にさしていた傘から腕を伸ばすと、手のひらにあたる雨はもうあまり感じられない。
 上を向けば薄雲から零れ出る陽光に間もなく雨が止む事を確信しながら、校門を後にした。
 校門を出てすぐに続く今は盛りをすぎた桜並木道を下って行くと、十字路に突き当たる。
 本当ならば此処を真っ直ぐ入れば駅へと続く遊歩道なのだが、自宅の最寄り駅には何も無いのでろくに買い物もままならない。
 親に頼まれていた買い物もあったので、十字路を右に曲がってこの町唯一の商店街へと足を向ける。

 

 辿り着いたのは、お世辞にも栄えてるなんていえない小さな商店街。
 ここにあるのは、大手企業なんて欠片も見えない個人商店の束と、アナログのピンボールがメインの遊戯場くらい。
 其れだけでも若者が寄り付かなそうなものなのに、極めつけは鈍行二両編成で都市部まで一時間以上かかるという、この立地。
 本来なら生徒のたまり場になるはずの商店街も、山間の田舎のテンプレートの様なこの町では事情が違うようだ。
 長居は無用。
 近所の主婦達に紛れて早々に買い物を済ませ、気分転換に普段とは違う道を通って帰る事にした。
 ついでに雨もすっかり止んだようなので、愛用の折り畳み傘をカバーに入れて鞄に仕舞い込んだ。

 

 道なりに緩い上り坂を進んで行くと、開けた丘に面して少し大きめの公園がある。
 此方に足を伸ばすことはほとんどないので折角だと少し立ち寄ってみるが、先ほどまで降っていた雨のせいか、人は殆ど居なかった。

 

 御馴染みの遊具が集まる入り口付近から左にはキャッチボールが出来そうな位の広く設けられたスペースがあり、そこには今は幾つもの水溜りが張っている。
 その中の一際大きな水溜りの中に、長靴姿の小さな男の子が今にも泣きそうな顔で立ち尽くしていた。

「君、一人? お母さんは?」

 気になって、近付いて声をかける。すると振り向いた男の子は、ひどく不安そうな表情で私の質問に答えた。

「わかんない・・・」

「そっか・・・」

 ありそうで中々無い迷子と出逢うこの状況に、私も困った表情を見せた。
 さすがに放っておくわけにもいかないけど、ここで待っていて親御さんがくるものなのかな。
 すると私の表情を敏感に読み取ったのか、男の子がまた泣きそうな顔になる。私は慌てて表情を取り繕うと、いよいよ雲の切れ目から地面を覗き込み始めた陽の光にひとつ妙案を思い出して、男の子に笑ってみせた。

「・・・空も泣き止んだし、君も泣いちゃダメだよ。そうだ、お母さんがお迎えにくるまで、空がお化粧するのを見てようか」

 私がそう提案すると、男の子はうっすら涙を浮かべた顔で可愛く首を傾げた。

 今の様な年齢になれば頑張って都市部にいくけれど、小さい頃は私にとっても近所の公園こそが最大の遊び場だった。
 それこそ水溜り一つで大はしゃぎしていたような小さい頃の私を、子守役のお父さんは休日の度に家の外に連れ出しては遊んでくれたものだった。

 小さい頃、長靴を履いて水溜りに飛び込んだ経験って、結構誰にでもあると思う。

 その水溜りに飛び込むとぱっと波紋が広がって、小さな水しぶきと共に水溜りに映り込んだ青い空が揺れる。
 私はそれを見るのが何故か無性に楽しくて、いくつも水溜りに飛び込んでは、その光景を見ていた。

 そうしたら、すっかり足元が水浸しの私を見かねた子守役のお父さんがこう言った。

「水溜りはお空が自分用に作った鏡だから、間に入って邪魔をしてはいけないよ」

 その言葉に、私は首を傾げて聞き返した。

「お空も、お母さんみたいに鏡を見てお化粧するの?」

 それを聞いたお父さんは少しキョトンとした顔をして、次ににっこりと笑った。

「あぁ、その通りだよ。お空もお化粧をするんだ。だから、あんまり邪魔をしてはいけないよ」

「わぁ、お空のお化粧、見てみたいなぁ」

 私がそう言うと、目を細めて笑ったお父さんは私を抱き上げてくれた。

「よし、じゃあよーくその水溜りを見ててごらん。キラキラって光ったら、お化粧が終わった合図だよ」

「いつ終わるの?」

 待ちきれない、という風に私が聞くと、お父さんはニヤッと笑ってみせた。

「心配しなくても、お母さんほど時間はかからない」

 それなら安心だ。
 私がお父さんの顔から水溜りに目を移すと、待ってましたとばかりにキラキラと、色とりどりに水溜りが光った。
 お父さんは、得意そうに言った。

「そらきた、上を向いてごらん」

 私はその言葉に、ゆっくりと空を見上げた。

 

「ほらきた、上を向いてごらん」

 水溜りから少し離れて二人してじーっと見ていたところにキラキラと光る合図を見つけて、私が男の子に言う。
 男の子は言われるままにゆっくりと空を見上げると、それは見事な化粧を施した透き通るような青空が、その円らな瞳に飛び込んできた。

「うわぁ、虹だ!」

 ぱっと明るい表情になって、男の子がはしゃぐ。

「ね、お空のお化粧、綺麗でしょ?」

「うん!凄くキレイ!」

 大はしゃぎする男の子に目を細めながら、私はにっこりと笑った。
 昔は逆の立場で私がこうしてたいそうはしゃいだものだから、お父さんはそれから雨上がりの休日の度に私にせがまれては外に繰り出したものだっけ。

ひとしきりそうして見上げて空を見上げたり水溜りを眺めていると、公園の入り口から男の子の名前らしきものを声に出しながら誰かが駆け寄ってきた。

「お母さん!」

 男の子は駆け寄ってきたお母さんを見つけると、迷子だったことなんかすっかり忘れて勢いよくお母さんの服を片手で掴み、もう片方の手で空を指差した。

「ほら、お空のお化粧!」

 その表現にお母さんは首を傾げたけど、男の子が指差した虹を見て、お母さんもあのときのお父さんのように微笑んだ。

 お母さんと男の子と別れてから、今度は緩い下りになった帰り道をゆっくりと進みながら、道に点在する水溜りに目を向ける。
 そのどれもが青空を移してキラキラと光り輝いていて、見上げればそこには相変わらず綺麗な虹。

 私はそれを見て思わず頬を緩ませながら、駅へと歩いていった。次の雨上がりの休日には、久しぶりにお父さんにせがんでみようかな、なんて考えながら。

 

2011/6/19

物書きの集い・お題企画 「水溜り」 より

 

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虹色道に集う人々

 

 淑やかに舞い降る小雨には傘をさす気にもならず、折りたたみ傘を鞄に仕舞い込んだ。
 部活動に忙しい友人たちを尻目に、一足早く午前授業のみで終わった学校をあとにする。
 田舎らしく山間にひっそりと建つ母校を背に、上を向けば薄い雲から控えめに零れる日の光にもどかしさを感じながら、今はなりをひそめる桜並木道を下る。
 並木道が終われば、十字路からさらにまっすぐ伸びる石畳の遊歩道を十五分ほど歩いて、今時珍しく二両編成で事足りるローカル線の走る無人駅がある。
 遊歩道に入れば、駅までは道の両脇をこれでもかというほどに、見事な紫陽花達が所狭しと陣取っている。ここは地元ではちょっとした紫陽花の名所なのだ。
 十数メートル毎に木枠で区切られたその色とりどりの紫陽花たちが居並ぶこの道は、地元民には虹色道なんて名前で呼ばれている。
 品種や土壌の肥料を変え、同時期に様々な色合いの紫陽花達が存分に自己主張する様子を見事に表した、粋なネーミングだと思う。

 虹色道は途中途中に散策を楽しむ人々のための簡易休憩所が設けられており、週末のこんな時間には、色々な人々が小雨にもかかわらず出向いていた。

 

 最初にすれ違ったのは、小さな子供を連れた若い母親。
 色鮮やかな紫陽花を手に取ってはしゃぐ息子をみて微笑みながら、時折薄雲から差す陽に眩しそうにしている。
 紫陽花の花言葉には「家族の結びつき」という説があるそうだ。小さな萼片が寄り集まっている様から連想されたものだとか。
 まさにこの虹色道に、ぴったりのお二人。

 

 次にすれ違ったのは、こんな田舎町にはちょっと不似合いな、垢抜けた服装のお兄さん。
 彼方は気がついていないだろうけれど、ここで何度かすれ違ってて彼の事は実は見知っている。
 彼はいつも、違う女性と此処を歩いているのだ。
 でも、今日はお一人。
 あんまりおいたが過ぎて愛想をつかされたのか、はたまたこれから来る新しい彼女を待っているのか。
 知ってる?
 紫陽花の花言葉には、その色の移り変わりから「心変わり」というのもあるそうで。
 果たして今回それは彼に起こったのか、彼女さんに起こったのか。

 

 次に見えてきた人影は、備え付けられたベンチに腰掛けて紫陽花を眺めているおじいさん。
 このおじいさんのことは、よく知っている。ずばり名付けて、「アジサイ博士」だ。
 彼はいつもここで、ああして紫陽花を眺めている。

「こんにちは」

 後ろから声をかけると、おじいさんはゆっくりとこちらに向き直り、いつもかぶっているおしゃれな帽子のツバを軽く持ち上げて会釈をしてくれた。
 ここは休憩所になっていて屋根がついているので、雨を逃れているそのベンチのおじいさんの横に、いつもの様に腰掛けた。

「今日は小雨を浴びて、紫陽花達が活き活きしてますね」

 そう言うと、おじいさんは目尻にたいそう皺を寄せて微笑んだ。

「あぁ、そうだね。よく澄んだ色合いで、喜んでいるね」

 そう言うとおじいさんは、まるで我が子を見つめるような優しい目で紫陽花に視線を向けた。

「お嬢さんは知っているかな。アジサイという花の漢字を」

 おじいさんがそう言うと、私は即座に答えた。

「えっと、紫の陽の花、で紫陽花、ですよね」

 自信たっぷりに答えると、おじいさんはこちらを見ながら、いたずらっぽいチャーミングな笑みを浮かべた。

「半分正解で、半分は誤り、かな」

「半分・・・?」

 首を傾げてそう言うと、おじいさんは紫陽花に視線を戻してゆっくり口を開いた。

「初めてアジサイという花が文献に出たのは、万葉集だと言われているね。万葉集はご存知かな?」

 おじいさんの問いかけに、コクリと頷く。古文の授業で丁度扱っている真っ最中だ。

「そこには二首の歌に、こう記されている」

 そう言うとおじいさんは脇に立てかけてあった傘の先で、地面に文字を書いた。
 地面には、味狭藍と、安治佐為の文字。
 私はへぇーと口に出しながら、それを見下ろす。

「だが後世でアジサイに漢字をあてがうに当たり、唐の詩人の白楽天の詩の中にあった、紫陽花という文字が使われた。それが今の世に広く定着している、というわけなんだよ」

 言葉と共に地面には先の文字の下に、紫陽花の文字。
 再び感心したように私が声を上げると、おじいさんはまた微笑んだ。

「それじゃあ、アジサイって元々は中国の花なんですか?」

 そう問うと、おじいさんはしたり顔で首を横に振った。

「いいや、日本と、あとは東南アジアが原産だね。白楽天の詩にある紫陽花というのは、中国のとあるお寺の山樹に咲く、紫色の仙界の麗華の事を言うのだそうだよ。私たちのよく知るアジサイとは、無関係のものだそうだね」

 言いながら、更に地面に文字を描く。
 そこには、「集真藍」の文字。

「これの読みは、あづさあい。「あづ」は集まるの意で、「さ」は接頭語。そして「藍」が青の意味だね。この字が学問的には有力とされるアジサイのあて字なんだよ」

「集まる、かぁ。なんか、この道と私たちにぴったりの字。素敵な響きですね」

三たび、私は感嘆の声を上げながらそういった。するとおじいさんは満足そうな笑顔でそれに頷いてくれて、またいつもの優しい目でアジサイを眺めた。

「あぁ、その通りだね。私もこの字が好きだよ。こうして人々が集まり、アジサイが綺麗に咲くこの虹色道は、本当に私の宝物だ」

 おじいさんはそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。

「さて、今日はここまでにしよう。またお嬢さんに会えるのを、楽しみにしているよ」

 小雨もすっかり止んだ空をふと見上げると、おじいさんはゆっくりした足取りでいつもの様に、駅と反対方面に歩いていく。
 それを見送って、私も立ち上がった。

 

 

 駅が見え始める辺りに、道の脇でアジサイに囲まれた、小さなお墓がある。
 ずっと昔からあるみたいで誰も気にしないそのお墓には、私が一目惚れしたとびきり綺麗なアジサイがいつも添えられている。
 初めてアジサイ博士と出会ったのは、まさにここで一目惚れした、その時だった。
 直接聞いたわけじゃないけれど、きっと此処には博士の大事な人が眠っているんだと思う。
 そしてこの虹色道を博士はその人と、いつも散策していたに違いない。
 そしてその人は、博士と同じでアジサイがとても好きなのだろう。

 そんな二人が長年愛してきたであろうこの虹色道を通る誰もが、何時の間にかアジサイが好きになっている。
 当然だろう。
 こんなに綺麗に咲き誇るアジサイ達に囲まれて、好きにならないわけがない。

 今一度愛情たっぷりに虹色に咲き乱れるアジサイ達に視線を注ぐと、私はこの虹色道に週明けの再会を誓って、駅へと歩き始めた。

 次はどんな話が聞けるのか、週明けを楽しみに待ちながら。

 

2011/6/16

物書きの集い・お題企画 「紫陽花」 より

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一次創作

 

こちらのページでは、筆者の妄想の迸るままに描かれたオリジナルという名の負の遺産が厳重隔離されております。

主に短編集で展開しておりますが、今後長編も・・・はないなぁ。老後の楽しみですかね・・・笑

因みにご覧いただけましたらば、コメントやマシュマロでご批評・ご感想等頂けると、今後の妄想意欲や妄想作りに大変重宝させていただきたいと思いますので、協力してやらないでもないという神様はよろしくお願いします。

短編

・虹色道に集う人々

忍者サイトマスター内「物書きの集い・お題企画」より、紫陽花。その名の通り、お題に沿って書かれた文章です。もはや黒歴史レベル。

・空の鏡

忍者サイトマスター内「物書きの集い・お題企画」より、水溜り。もうなんていうか黒歴史。ってうかこのページ真っ黒だな!

・風を呼ぶ家

忍者サイトマスター内「物書きの集い・お題企画」より、風鈴。ネタが浮かばないので世界観の同じ擬似連作みたいになってきてしまった。Oh、黒歴史デース

・大きいのは正義

忍者サイトマスター内「忍題β・お題企画」より、○○○○。誰だこんなお題出した奴!ノリノリで書いちゃったじゃないかありがとう!下らな過ぎるのでご注意。相変わらず黒歴史は黒歴史。